【記事・動画公開】ニワトリ卵の検卵と孵化後の予防接種業務

【記事・動画公開】ニワトリ卵の検卵と孵化後の予防接種業務

名古屋大学の生物・生体技術支援室は、鳥類バイオサイエンス研究センターの動物飼育管理業務を支援しています。今回は技術職員による検卵とワクチン接種を紹介します。

鳥類バイオサイエンス研究センターは生命農学研究科付属施設で、国のナショナルバイオリソースプロジェクト実施機関です。ニワトリ40系統とウズラ23系統を保存し、約3000羽の個体を常時育成して研究者に提供しています。センターでは、技術職員の高間さん、技術員の植村さんと技術補佐員の井上さんと末次さんの4名が、給餌・集卵・鶏舎清掃、個体管理、人工授精や遺伝子型の判定など様々な業務を行っています。

発育状態 "不良"

検卵業務の日、私たち取材スタッフは現場スタッフの指示にしたがい、入口の洗い場で手をよく洗ってから、作業服・マスク・手袋・長靴を着用します。感染予防のため手をアルコールで殺菌し、長靴を消毒槽で洗ってから、孵卵器のある部屋に入ります。

鶏の有精卵は孵卵器に入れてから22日目で孵化しますが、その3日前に発育状況を確認し、状態の良い卵だけをハッチャーと呼ばれる金属製のカゴに移す作業を行います。卵が並べられたトレーを孵卵器から取り出し、遮光カーテンで部屋の一角を暗くしてから、卵一つ一つにライトを当て発育の状態を確認します。胚が順調に育っていれば成長した体が光を遮り、発育の悪い卵は光が良く通るので、発育良好なものだけを選び孵卵器に戻します。孵卵器の中では、卵が37.5℃に保温されるだけでなく、水平方向45°にゆっくりと傾け揺らされています(転卵)。自然界では親鳥が卵を温める際に、時折転がして発生を促すのですが、その代わりに、孵卵器の中でトレーごと卵を動かし、胚が殻に癒着するのを防いでいるそうです。

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検卵から3日後、卵がいよいよ孵化します。今回孵卵器に入卵した有精卵160個のうち、孵化したのは80羽、普段から孵化率は50%ほど。黄色や茶色の柔らかい幼毛におおわれ、ピヨピヨと元気に鳴いている雛を、ハッチャーごと孵卵器から取り出し、脚帯とよばれる個体識別番号が印字された金属の帯を、雛の足首に巻きつけていきます。足首を圧迫しないよう空間に余裕をもたせつつ、抜けないよう慎重に取り付けていました。

次はワクチン接種です。ワクチンは、現在皮下注射のものと点眼薬の2種類があります。手分けして、一人が目薬を片目に点眼し雛が瞬きしたら、もう一人に雛を渡し、ワクチン0.2 mLが注射されます。80羽全ての雛にワクチン投与と点眼を終え、飼育用のケージに雛を移し、水で練った餌と水を与えたら孵化後の作業は完了です。
コロナウイルス感染が流行していた時期には、職場内感染による業務停止を避けるために、一人ずつ交代でこの業務をされていて、非常に大変だったそうです。

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こうした担当スタッフによる日々の研究支援のお陰で、研究者がいつでも良い状態の実験動物や試料を使って教育研究をすることができるのです。

担当スタッフ:(技術職員)高間瑠佳、(技術員)植村武夫、(技術補佐員)井上直樹、末次桃子

 東海国立大学機構統括技術センター公式チャンネル
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【記事及び動画作成・問い合わせ先】

 国立大学法人 東海国立大学 統括技術センター
 CFA(生物生体,高度専門技術担当)中西 華代,CFA補佐 松浦 彩夏
 cfa[at]tech.thers.ac.jp ※[at]を@に変えてご使用ください