20年の時を経て飛騨山林に溶け込んだ位山演習林の案内看板が 下呂市景観賞 景観賞サイン・工作物部門で優秀賞を受賞

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20年の時を経て飛騨山林に溶け込んだ位山演習林の案内看板が 下呂市景観賞 景観賞サイン・工作物部門で優秀賞を受賞

岐阜大学応用生物科学部附属岐阜フィールド科学研究センター位山演習林の案内看板が、令和4年度下呂市景観賞サイン・工作物部門で、優秀賞を受賞し、令和5年4月に下呂市庁舎にて授賞式が執り行われました。この案内看板は、下呂市萩原町山之口の管理事務所から300メートルほど手前林道の分岐点に設置されています。

下呂市景観賞は、市の景観形成に貢献している建築物、屋外広告物などの所有者、設計者、施工者に授与されます。今回の受賞では、「素材の持つインパクトを生かし存在感がありつつも、山林にとけ込み森林景観と調和がとれていること」が評価されました。

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景観賞 表彰状

案内看板は演習林で伐採された推定樹齢300年の天然ヒノキから、20年前に作製されました。下呂市の景観アドバイザーを兼務する職員の勧めで、挑戦することになったそうです。都竹技師と青木技師は、日ごろの業務で培った木材加工技術を活かし、日光や風雨にさらされ風化した表面を磨き上げ、文字を塗り直し、全体に光沢をもたせるよう塗装を施して応募に臨みました。

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制作当時は、年に2本ほど適した大きさに育った天然ヒノキを伐採し、素材として市場に出荷していましたが、ある時、原木の髄が腐った木があり、根元を切り落として出荷することになりました。残った切株側の原木は、直径80センチメートル高さ2メートルほど。都竹さんを含む当時の技術職員3名は、貴重な天然木材を惜しみ、何かに活用できないかと考えついたのが、案内看板です。原木の樹皮を剥いで、ワイヤーサンダーという電動ブラシで表面を研磨、一年間乾燥させてから、幹の側面をチェーンソーで平らに削り研磨し、外部の委託会社により文字が掘られました。

土台には濃飛流紋岩と呼ばれる、この地域特有の非常に硬い火山岩を使っています。春の雪解けに伴い演習林敷地内に転がり落ちてくる巨石の中から、平らな石を探しました。苦労して探し当てた丁度よい大きさと形の石を2つ組み合わせ、その上に案内看板を載せたらピッタリと納まったので、看板が転倒しないよう、腐って中空となった髄の部分に金属パイプを通し、土台の石とワイヤーで繋ぎ締め上げ完成させました。

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国産の天然ヒノキ材は、たいへん希少です。厳しい自然環境の中でゆっくりと育つ天然ヒノキは、年輪の幅が狭く緻密で、耐久性に優れており、市場では高値で取引されています。しかし、天然ヒノキ林保護という学内研究者の意向により、現在、位山演習林では伐採に適した大きさになった樹木であっても伐採を行わないそうです。

技術職員の発想・工夫、チャレンジ精神が、演習林での研究教育に加えて地域文化の振興に貢献していることを、誇りに思い賞賛したいと思います。

担当技術職員:都竹彰則、青木将也

【記事作成・問い合わせ先】

 国立大学法人 東海国立大学 統括技術センター
 CFA(生物生体,高度専門技術担当)中西 華代,CFA補佐 松浦 彩夏
 cfa[at]tech.thers.ac.jp ※[at]を@に変えてご使用ください