小川 直也

技術職員インタビュー

04

目指すは
化学分析の頼れる存在

Naoya Ogawa

名古屋大学

副技師

小川 直也

[ 専門 ]  有機化学、分析化学、質量分析、実験研究支援

■ 経歴

岐阜県出身。名古屋工業大学大学院修士課程を修了したのち、自動車部品メーカーに5年間勤務。その後2021年4月に名古屋大学全学技術センター技術職員として入職すると、間もなく先輩技術職員から、今までの経験や知識を認められ、新規導入の分析装置を担当することに。現在、名古屋大学農学部質量分析室に設置されている質量分析計7台の維持管理及び測定代行、質量分析計を使用する学生からの技術相談や技術指導に従事している。

社会人として働く中で本当に身を置きたい環境に気づいた

——現在担当されている業務を教えてください。

主に農学部質量分析室で質量分析の測定代行を行っています。特に多く扱うのは、統括技術センターに2021年度に新しく導入された共用機器の1つである、Orbitrap Exploris 240(以下、Orbitrap)です。大学の実験装置は、長年使われてきているものも多く、勤め始めて1年目で装置の新規導入に立ち会えるということは非常に稀なので、設置時から関われたOrbitrapには思い入れも強く、大切に使っています。どんなものをどのように測定できるか、解析に必要なソフトウェアの機能など、メーカーの担当者による分析・解析トレーニングを受けたり、時間に余裕があれば様々な試料の測定にチャレンジして自主学習を続けたりすることで、測定代行業務にもある程度自信を持って取り組めるようになりました。そのほかに、質量分析計の保守業務や質量分析計を使いたいという学生への対応も行っています。

——技術職員として勤めることになったきっかけは何ですか。

当初有機化学そのものに興味があり大学へ進学しました。大学時代には、「将来はどこかのメーカーの研究者か分析センターに勤めたい」と考えていましたが、学んでいるうちに化学分析のほうに興味が出始めました。そのころ偶然クラス担当の教員から「学内で質量分析装置のオペレート業務を担当する技術補佐員の募集がある」と聞き、大学院入試が始まるまでのおよそ1年間、技術補佐員としてアルバイトをしました。オペレート業務をこなすなかで技術職員の方と仲良くなり、その職業や業務内容を詳しく知るようになりました。
修士課程を修了した後は、自動車部品メーカーの品質管理部門に勤めていましたが、質量分析計に触れる機会が減り、技術補佐員時代を思い返すことが増え「やはり、アカデミックな研究に携わりたい」という思いが強くなり、思い切って転職を決めました。国立大学法人等職員採用試験の受験年齢制限ギリギリという年度に化学系技術職員の公募を見つけられ、とても運がよかったなと思います。

とにかく、分析が好き

———業務中に喜びを感じることはありますか。

質量分析計で測定した結果が、予想通りだったときやきれいなピーク(測定結果で示されるグラフ)が出たときは、その試料を分析する上で自分の設定した分析条件が合致したということなので、とてもうれしいです。逆に、使用する溶媒が適切でなかったり、条件があっていなかったとわかる結果が出てしまったりするとがっかりします。あとは、機械に予想していなかった不具合が起こると多少テンションが下がりますね。ただ、不具合が起きた時に装置を調べて修理したり、対応後にテスト測定を重ねて直ったかどうかを確認したりする過程にも技術者としては興味があって、嫌いというわけではありません。分析にかかわる仕事で、ネガティブな気持ちになることはほとんど無いです。
また、最近は質量分析計の使い方を教えた学生とよく話すようになり、学生とのかかわりにも楽しさを見出せるようになりました。技術職員として、分析や解析について気軽に相談してもらえるのはとてもうれしいです。

研究者からも信頼される質量分析技術を持ちたい

—— 技術職員として今後の目標があれば、教えてください。

やはり、質量分析に関する知識と技術の向上でしょうか。一口に質量分析といっても、方法や装置がとても幅広く存在するので、私が現在、主に担当しているOrbitrapのような液体クロマトグラフ質量分析計だけではなくて、ガスクロマトグラフ質量分析計のような他の装置を使用した分析や、幅広い分野の測定試料に応じた分析のスキルアップをしていきたいです。また、修士課程時代に使用していたこともある核磁気共鳴装置(NMR)のような他の分析装置も使えるようになれたらいいなと思っています。そのためには「ほかの装置を触る機会があるときは実際に触ってみる、いろいろなことに興味を持てるようアンテナを張っておく」ことが大切かな、と考えています。さらなる目標としては研究について研究者と対等に議論できるようになりたいです。分析系の同僚で、先輩職員でもある高濱さん沢田さんは、研究者である先生方とのやりとりからでも信頼されているということが伝わってきます。お2人のように研究や実験について、分析の専門家としての視点から研究者と深い議論ができるようになり、いつか「この人に任せれば、質量分析は大丈夫だろう」と信頼していただけるような技術職員になることが目標です。

[本記事内容は2023年度に取材したものです]