髙濵 謙太朗

技術職員インタビュー

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研究者と共用設備・機器、
技術職員をつなぐCFA

Takahama Kentaro, Ph.D.

名古屋大学

イノベーションコアファシリティステーション運営室長,総括CFA(総括,戦略担当)

髙濵 謙太朗

[ 専門 ]  生命科学、材料科学、X線吸収分光、質量分析、放射性同位元素利用実験

■ 経歴

静岡県出身。バイオサイエンス分野で博士(理学)の学位を取得。2015年に名古屋大学全学技術センターに着任。2020年4月から同センター企画室 設備・機器アドミニストレーターに選任され、名古屋大学の研究基盤である共用設備・機器の利用促進、高付加価値な研究成果を創出するための利用相談等に関わるマネジメント業務に従事。2021年4月から東海国立大学機構統括技術センター 総括CFA(総括,戦略担当)、2022年4月からイノベーションコアファシリティステーション運営室長として活動の場を広げている。

研究環境を支える技術職員

世界は、新型コロナウィルス感染症をはじめとする疾病の克服、気候変動問題に伴うカーボンニュートラルやSDGs(持続可能な開発目標)の推進、Society 5.0の実現など、数多くの課題に直面しています。これらの課題を解決し、次のフェーズへの扉を開くカギの一つが科学技術の発展なのです。

これまで科学技術の発展は、大学の教員や企業の研究員等といった「研究者」が主役でした。今後も研究者の役割の重要性は変わらないでしょう。しかし、現代の最先端研究では、何種類もの高性能で精密な研究用設備・機器を用いた実験や、幅広い分野にわたる高度な実験技術等が必要になる場面が少なくありません。

研究者と研究室は、資金や時間に限りがあることから、実験や実験技術の全てをカバーすることは極めて困難です。そのため、大学の共用設備・機器の活用促進と、研究者のパートナーとして研究環境を支える「技術職員」の存在は必要不可欠です。

研究環境の積極的な利用を

東海国立大学機構は、500台を超える共用設備・機器と、約200人の技術職員が所属しています。共用設備・機器としては、「高磁場核磁気共鳴装置」「高速液体クロマトグラフ精密質量分析装置」「電子顕微鏡」「X線回折装置」をはじめとする優れた装置を所有しています。

また、技術職員は「情報通信」「環境安全」「装置開発」「計測・制御」「分析・物質」「フィールド」の6分野における専門的な技術で、日々の研究支援を行っています。このような研究環境は、全国に86ある国立大学法人の中でも有数であり、積極的な利用が研究成果の創出につながることを期待しています。

ニーズとシーズをつなぐハブ

東海国立大学機構には、設備・機器の情報を検索するデータベース等があります。しかし、共用設備・機器や技術分野が多岐にわたるようになったことで、利用したい装置等をピンポイントで見つけ出しにくくなったほか、問題解決にどの装置を利用したらいいのか分からないという声も寄せられています。

こうした問題を解決し、研究者のニーズと共用設備・機器、技術職員のシーズをつなぐハブとなることが、私たちコアファシリティアドミニストレーター(CFA)の使命です。

具体的には、CFAは技術職員としての専門知識・技術を活用し、研究者から寄せられた技術相談や技術支援依頼をワンストップの窓口としてマネジメントすることで、東海国立大学機構内の適切な設備・機器の利用や技術支援につなげます。

また、東海国立大学機構内の技術シーズで対応が難しいものについては、日本全国の共用設備・機器や技術職員のネットワークを通じて、最適な研究支援が受けられる場を紹介します。

さらに、東海国立大学機構の共用設備・機器や技術シーズの活用促進のために、設備・機器や技術に関する研修会やシンポジウム等による積極的な情報発信を行うための企画も進めています。

研究支援に高いシナジー効果

それだけでなく、研究者からのニーズに基づいて、設備・機器の整備・更新計画や技術職員の人材育成計画の策定に参画したりするなど、研究基盤・研究環境の継続的な維持と発展を見据えた戦略においても重要な役割を担っています。

このように共用設備・機器の利用と技術職員による技術支援を有機的にマネジメントし、研究者への研究支援に高いシナジー効果をもたらすCFAという存在は、他では見られない東海国立大学機構イノベーションコアファシリティステーション(TICFS)の最大の特色です。

現在、CFAチームは5名で構成されています。いずれも博士の学位やそれに準じる資格、専門知識・技術を有しており、研究者や技術者として学術研究、産業研究等に貢献してきた経験を持ちます。

TICFSはまだ始まったばかりです。各人がこれまでの経験を生かすとともに、さらに多くの経験を積んで東海国立大学機構、中部・東海地域から我が国全体にいたる研究力強化と、若手をはじめとする全ての研究者の支援に貢献していきたいと考えています。

もし、研究開発でお困りでしたら、ぜひとも私たちにご相談ください。最先端研究を推進する研究者のパートナーたる技術職員として、共に悩み、共に考え、最適な研究支援を提供していきます。

[本記事内容は2021年度に取材したものです]