沢田 義治

技術職員インタビュー

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研究を支援する“パートナー”

Sawada Yoshiharu, Ph.D.

岐阜大学

技師,CFA

沢田 義治

[ 専門 ] 有機化学、核磁気共鳴、質量分析、分光装置、電子顕微鏡測定

■ 経歴

愛知県出身。有機化学分野で博士(農学)の学位を取得。大学発ベンチャー企業で試薬の開発、生産、品質管理に携わった後、2014年に岐阜大学生命科学総合研究支援センター機器分析分野配置の職員に採用された。20年4月に東海国立大学機構の発足に伴い、岐阜大学高等研究院全学技術センターの所属となり、同院科学研究基盤センター機器分析分野に配置された後、23年1月に名古屋大学全学技術センターに異動。2023年12月にCFAに選任され現在に至る。

学生の研究と企業の研究の違い

学生時代は、立体構造を制御した有機合成反応に関する研究に取り組み、生成物の構造を証明するために同センターの装置を使用していました。興味のおもむくままに実験ができる学生の研究は楽しいものです。

卒業後、大学発のベンチャー企業に4年間勤務し、お茶の有効成分から高純度の試薬を生成する業務などに従事しました。学生の研究とは違い、企業の研究開発となると、結果が求められます。サンプルを分析して思った通りの構造や配列になっているかを確かめ、商品の品質管理までをトータルで行っていました。

業務の中で実験を行ううちに、設備機器の管理や分析技術の支援をする仕事への興味が高まり、2014年に母校の岐阜大学に戻って技術職員となりました。

研究者の方に寄り添って問題解決

私のスキルの土台は、学生のころに教わった技術職員の方の技術です。当時は些細な問題が解決できず、どのように材料を分析していいか分からなくなり、研究が行き詰まってしまうことがありました。このような時に相談に乗ってくれたのが技術職員の方でした。

技術職員の方は設備機器だけでなく、材料の特性などの知識も豊富で、五里霧中だった私の研究に明かりをともしてくれたことを覚えています。技術職員の方は、まさに研究を共にする“パートナー”のような存在だと思いました。

学生時代の記憶がベースとなり、現在、私は岐阜大学高等研究院科学研究基盤センターの技術職員として研究者の方たちのサポートをしています。センターには電子顕微鏡や核磁気共鳴装置、質量分析装置といった大小70種類の設備機器があります。これらの設備機器を用い、研究者の方たちに寄り添い、問題解決に取り組んでいます

設備機器の仕組みを理解する

例えばNMRでは、材料の分析結果が画面上に表示されますが、ただ、本来、表示されるべきデータが消えている場合があります。消えたデータ中に開発や改善する上での重要なファクターが隠されていることがあり、幅広い知識がなければ見抜けません。

最近は設備機器の自動化が進んでいます。誰でも簡単に設備機器を使えるようになりましたが、その分、利用する方のスキルがデータの精度に大きく左右するようになったのです。機械が何をしているのかを使う側が理解していないと、データに振り回されることになりかねません。

自分が設備機器で何をしているのかを理解することは大事です。それをおろそかにすると研究の継続性が失われます。そういった意味では、どれだけ自動化が進もうとも、データの意味を伝えられる技術職員の役割は小さくないと考えます。

また、分析では、サンプルの作成方法が結果を大きく左右しますので、利用する方への指導は細心の注意を払っています。実際の分析では、材料のサンプルを何パターンか用意してもらいます。私のアドバイスで研究のエビデンスとなるデータが得られた時はうれしいですね。

2つの大学が連携して相乗効果

2020年4月、名古屋大学と岐阜大学が法人統合し、東海国立大学機構が設立されました。両大学併せて、技術職員約200人が所属し、設備機器約500台を保有しています。単純に人数や台数が増えたわけではなく、相乗効果が確実に見られます。

統合によって設備機器のラインアップが充実したことで、これまで一方向から得ていたデータが、別方向のデータも得られるようになり、立体的に情報を分析することが可能となっています。

また、技術職員にとっても望ましい環境と言えます。それぞれの大学で業務を行っていた時は、知識や技術は大学の枠組みを超えては発展しません。しかし、2つの大学の技術職員が教え合うことで、その広がりは大きなものとなります。

実際、統合以後、連携体制は緊密になっており、設備機器の相互利用も進んでいます。今後は、技術を軸として、教員との関係強化を図れればと考えています。

[本記事内容は2021年度に取材したものです]