【記事・動画公開】名古屋大学医学研究科 法医解剖支援業務

【記事・動画公開】名古屋大学医学研究科 法医解剖支援業務

名古屋大学生物・生体技術支援室生体機能解析グループでは、大学病院で行われる病理解剖、医学部にて行われる法医解剖・献体業務を支援しています。今回は担当職員が死因不明のご遺体の法医解剖を補佐し、採取した検体から組織標本を作製する業務を取材しましたのでご紹介します。

愛知県では4つの大学病院が持ち回りで法医解剖を行っており、毎週火曜日と第3週の土曜日曜は名大医学部が当番です。法医学研究室の法医が執刀、吉本主席技師が補佐を務め、検視官立会いのもと死因究明を目的とした解剖が行われます。

当番日の朝、専用入口からご遺体が解剖室に搬入されると、吉本さんは警察関係者とともに身長・体重・頸囲などの身体計測、写真撮影、解剖器具等の準備を行います。法医解剖医が解剖室に来てから、外表の所見取りから始まり、解剖終了まで一体当たり3~4時間かかります。観察項目は大きく分けて29、さらに項目ごとに確認すべき事項がずらりと並び、結果の記録書は一体につきA4用紙約20枚にも及ぶそうです。

解剖時に規定の約50箇所から採取した臓器片を、ホルマリンで固定し、組織標本を作製します。吉本さんは、通常6日かかる組織標本の作製を、異なる作業を組み合わせ同一時間内に行い時短で完了させてしまえるつわものです。

固定組織を自動包埋装置にセットし、48時間かけてパラフィンを浸透させたら、60℃前後に保温された器具を使い、組織片を、一つ一つ包埋皿に入れてパラフィンブロックを作っていきます。冷えて固まったブロックをスライド式ミクロトームの試料台にセットして、3~4マイクロメートルの厚さに薄切します。試料台の角度を微調整し組織片の全面が出たら、ハーっと切り出し面に息を吹きかけて静電気を除き、切片の端をそっと抑えながら、慎重に薄切します。水浴に放した切片をスライドグラスで掬い上げ、湯浴でしわを伸ばし、スライドグラスに密着させホットプレートで乾かします。

C0454 - frame at 1m50s

乾いたスライドグラス約50枚を金属製の染色篭に入れて、パラフィン除去後に染色を行います。ヘマトキシリンとエオジンという二種類の色素で、核とそれ以外の組織成分を青紫色と赤色に染め分け、染色されたスライドを有機溶剤で置換したら、カバーグラスを被せ封入溶液で封入します。気泡が入らないようピンセットでカバーガラスを抑え、手早く封入するまで1枚僅か7~8秒。取材スタッフが熟練の技に感嘆すると、「30年近くやっているからね」と微笑み、組織の厚さに応じて封入溶液の量を調整していることを教えて下さいました。

C0488 - frame at 2m36s

完成した組織標本の中から1枚とって、それが肩の筋肉組織で、染色の色合いから比較的新しい出血であることが肉眼で分かると話してくれました。標本を顕微鏡で観ると、確かに千切れた筋肉組織の間に円盤状の赤血球がたくさん溜まっていることが分かります。赤血球の形状と凝集の具合から、亡くなられた際の出血であることが推定されるようです。

こうした、技術職員の専門知識・経験が、死因究明や犯罪捜査に役立ち、社会に貢献していることを、私たちは誇らしく思います。

担当スタッフ:(技術職員)吉本高士

 東海国立大学機構統括技術センター公式チャンネル
 https://www.youtube.com/@thers-tech

【記事及び動画作成・問い合わせ先】

 国立大学法人 東海国立大学 統括技術センター
 CFA(生物生体,高度専門技術担当)中西 華代,CFA補佐 松浦 彩夏
 cfa[at]tech.thers.ac.jp ※[at]を@に変えてご使用ください