【記事・動画公開】真空ポンプと質量分析計のメンテナンス

【記事・動画公開】真空ポンプと質量分析計のメンテナンス

名古屋大学農学部分析室では年一度の全学一斉停電点検に合わせて、真空ポンプと質量分析計のメンテナンスを行います。分析室の6機の質量分析計を稼働させるために、10台の真空ポンプが設置されており、年2回のメンテナンス期間を除いて、24時間休みなく動作しています。質量分析計を運用するうえで、真空ポンプのメンテナンスは大変重要な作業です。

分析計の内部をイオンが効率よく移動するには高真空が必要であり、この高真空をターボ分子ポンプと、その排気を助けるロータリーポンプが維持します。高真空が維持できないと、単に適正な測定ができないだけでなく、検出器の劣化や内部汚染が起こります。検出器の修理と再調整には、高額な費用と時間がかかる上に、その間装置の使用ができなくなってしまいます。

分析室では一斉停電直前に質量分析計の電源を停止、真空を解除し、技術職員4名が総出で10台のロータリーポンプを点検・整備します。分析計から吸気ラインを工具で慎重に外し、連結部品やパッキンについた汚れをていねいにふき取りながら、部品や本体の状態を確認していきます。パッキンの劣化は空気漏れに繋がるので、ひび割れたり、硬くなったりしている状態を発見したら、ストックしてある新品と交換します。良く似た部品が複数あるので、部品の種類や裏表、方向を間違えないよう、慎重に部品を接続します。

ロータリーポンプの廃油口を開け、内部のオイルをバットに取り出します。出てきたオイルは、新品の無色透明だったものが、褐色、あるいは、赤褐色に変色し、劣化していることが見て取れます。オイル汚れがひどい場合には、新しいオイルで数回内部を共洗いします。スタッフは白衣、ゴーグル、手袋を着用し、周囲や分析計を汚さないよう、こまめにオイルをふき取りながら、整備を進めていきます。廃油口を閉め、オイルゲージを確認しながら新しいオイルを充填し、分析計に取り付けたらひと段落です。

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次に、質量分析計本体の整備です。イオン源の洗浄、取り外し可能な部分の分解・清掃・消耗部品の交換等を行います。この作業が済んだら、質量分析計の電源を入れて、真空引きを始めます。真空引きにかかる時間は、半日で済むもの、丸3日以上かかるものと、分析計によって異なるので、真空度が既定圧以下になり、本体が正常に起動して測定できる状態になったものからチューニングに取り掛かります。各部位の電圧、分解能や感度を調整してから、標準試料を測定して質量軸と質量精度を校正したら調整完了です。

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古い分析計は丁寧に調整しても、中々調子が戻らないこともしばしば。そのような時は幾度となくパラメーターを変えて測定ができるような状態に戻していきます。こうした技術職員の技術と努力のお陰で、最新の装置も、購入してから何年も経った古い装置も、それぞれ充分に性能を発揮し、教育・研究に活用されています。

担当スタッフ:(技術職員)小川直也、河合ゆかり、髙濵謙太朗、北村繁幸

 東海国立大学機構統括技術センター公式チャンネル
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 国立大学法人 東海国立大学 統括技術センター
 CFA(生物生体,高度専門技術担当)中西 華代,CFA補佐 松浦 彩夏
 cfa[at]tech.thers.ac.jp ※[at]を@に変えてご使用ください